従来の畳と畳マットの違いについて:素材、サイズから設置方法まで余すところなく解説します

近年、インテリアにおける日本的なミニマリズムスタイルへの関心の高まりや、以前紹介したJapandiスタイルの流行も相まって、これらの様式を演出するうえで重要なアイテムである畳にも注目が集まっています。しかし、いわゆる従来の和室で使用されている畳をアメリカにおけるフローリングの住環境に導入するためには、設置のために住環境の根本設計を見直さなければならないなどの大きなハードルが発生します。ところが、昨今このようなハードルを解消し従来の畳の良い部分を残しつつ、洋室でも簡単に設置可能なタイプの畳が開発されました。これが「畳マット」と呼ばれるものです。畳マットが開発された経緯を紐解くと、近代日本の住環境の変化に行きつきます。第二次世界大戦後の日本では、アメリカを始めとした西洋文化からの影響もあり従来の和室からフローリング主体の洋室に人々の嗜好が徐々にシフトしていきました。こうしたこともあり、新築で建てられる住宅の多くは徐々に洋風のものに変わっていったのですが、興味深いことにフローリングの家が一般的になったころに日本人の中で再び伝統的な畳を用いた和室の良さを振り返る風潮が生まれたのです。ただし、一度建ててしまったフローリングの家を再び畳の和室にリフォームするにはそれなりの費用が掛かります。そうした中で誕生したのが、リフォームを行わずに簡単に畳の空間を作ることができる「畳マット」なのです。
このような経緯を経て誕生した畳マットは、フローリングの洋室に手軽に和の空間をもたらすことをコンセプトとして生まれてきたので、自然と米国の住環境で手軽に和の空間を演出したいというニーズにも十分にこたえることができます。ただ、「tatami」という言葉がある程度米国でも知名度を得てきたとはいえ、前述した「従来の畳」と「畳マット」の違いまでは十分に浸透していないようにも思われます。そこで今回は、その誕生から長い歴史を持つ伝統的な「畳」と、モダンな洋風住宅のインテリアに適応するべく誕生した「畳マット」の違いについて詳しく説明していきたいと思います。
INDEX
いわゆる「従来の畳」とは何を指すのか?

以前の記事(参照:畳の歴史について – その起源から現代のトレンドまで)でも紹介したように、畳はその言葉がおよそ1,300年前から使用されていたことからもわかるとおり、非常に長い歴史を持っています。い草を用いて作られた畳表と濃い色の布で縁取られた畳縁で構成された畳をしつらえた和室空間は、日本を舞台とした多くの時代劇を見られた方の印象に残っている事かと思います。近年では、エミー賞史上最多である18部門を受賞した「SHOGUN」でも、畳を用いた城内のシーンが登場していたので、記憶に新しい方も多いのではないでしょうか。真田広之とアンナ・サワイが印象深いシーンを演じた城内の床に敷き詰められていたあれこそ、この記事で指すところの「従来の畳」です。興味深いのは、SHOGUNのような時代劇で用いられていた畳が、現代の日本家庭においてもまだまだ現役で用いられている、という点です。実は、西洋化の影響を強く受けた日本の近代住建築においても、その間取りの中に畳を敷き詰めた和室を取り入れている家庭はまだまだ多いのです(このあたりの事情に関する詳細は、先のブログ記事“畳の本場である日本で「畳のある和室」が味わえる場所6選 #一般家庭の和室”を参照ください)。
従来の畳と畳マットの違いについて
先の章で、従来の畳についてご理解いただいたところで、次は近年登場した畳マットと比較してその違いを浮き彫りにしていきたいと思います。とはいうものの、従来の畳と畳マットに関しては実はその差異よりも共通している部分の方が多いのです。ですのでまずは両者で共通している部分からご紹介しましょう。
- 畳表の素材について
従来の畳は、畳表にい草を用いるのが伝統的なスタイルです。それに対して近年誕生した畳マットは、伝統的ない草に加えて用途に応じて和紙や樹脂を用いるケースもあります。ただしこうした素材が逆輸入的に従来の畳にも用いられるケースがありますので、現時点では畳表の素材においては違いは存在していないといってよいでしょう。
- 形状について
従来の畳は長方形となっておりますが、琉球畳など正方形のものも存在します。対して、近年開発された畳マットは正方形のものが主流ですが、実は長方形のものも存在します。ただし、日本では「畳マット」と聞いて多くの方は正方形のものを連想することが多いように思います。
- 畳縁について
従来の畳は、長方形の長辺部に補強等の目的で布を縫い付け、それが畳縁と呼ばれています。対して、主流の畳マットは畳縁が存在しないものが多いのですが、一部で畳縁を実装しているものも存在します。
ここまでは、従来の畳と畳マットの共通する部分をご紹介しましたが、ここからはいよいよ両者で異なる部分をご紹介します。
-
カラーバリエーションについて
両者の差異としてまずご紹介したいのが、畳マットが従来の畳の色に加えて非常に豊富なカラーバリエーションを持っていることです。畳表に新素材である和紙や樹脂を使用した畳マットは、開発当初のコンセプトから洋室との違和感のないコーディネーションを念頭に置いていることもあり、伝統的ない草の緑色にとらわれない多種多様な色の選択肢が用意されています。一例として、当社で提供している畳マットのカラーバリエーションをご紹介します。この中から、きっとあなた好みのインテリアスタイルにマッチした色合いを見つけることができるはずです。
Tatami Mat – Seiryu
Tatami Mat – Saien
-
厚さについて
次に挙げる違いが、両者の厚みについてです。従来の畳が55mm~60mm程度の厚みがあるのに対して、畳マットは厚み15mm程度となっています。ただし、畳マットが従来の畳よりも薄いからといってクッション性を犠牲にしていることは決してなく、それどころか従来の畳と同程度のクッション性を維持しています。むしろ従来の畳よりも薄くなったことで、持ち運びが収納が容易になり畳マットのメリットが増したともいえます。そのことで、畳マットを使用した場合は季節に応じたインテリアの模様替えなども手軽に楽しむことができます。
-
設置の手間について
そして、この違いが米国の住環境に従来の畳を実装するうえで最もハードルとなる点なのですが、実は従来の畳は床の下地の上にまんべんなく敷き込むことを前提に設計されているものなので、従来の畳を部屋のインテリアとして取り入れるためには、住宅建築時に和室の設計を取り込むか、もしくは畳実装のためのリフォームを行うなどの大掛かりな手間を要さなくてはなりません。従来の畳がどのように実装されるかを理解するためには、以下のイメージを見ていただければご理解いただけるのではないかと思います。このような実装方法が、畳マット以上に従来の畳に一定の「厚さ」が必要な理由にもなります。
対して、畳マットはそもそもフローリングの部屋で用いられることを前提として設計されているため、設置方法も一般的なマットのように床に敷くだけでそのほか一切の手間がかかりません。「置くだけでフローリングの上で滑らないか心配」とお考えの方もいるかもしれませんが、裏地に滑り止めが施されておりますのでその心配はご無用です。ただし、凹凸のあるフローリングでは、滑り止めの効果が弱まる可能性もありますのでご注意ください。
洋室にぴったりの畳は?
ここまで、従来の畳と畳マットを比較してその違いもしくは共通点について詳細に説明させていただきました。ここまで読んで「じゃあどちらの畳を自宅に取り入れたらいいの?」という疑問は払しょくされたのではないかと思います。結論から申し上げると、本格的に自宅を和室にリフォームする予定がない限りは、あなたのインテリアに和モダンな空間を演出するためにはまず畳マットを用いることをお薦めします。理由としては、先に述べた設置の容易さもさることながら、畳マットが本来洋風なインテリアとの調和を目的に設計されたものなので、和モダンなインテリアコーディネートを自宅でお手軽に実現することが可能な点も挙げられます。その際は、畳マットの形状は正方形のもの、畳縁はないものを用いた方がよりモダンな雰囲気を演出することが可能となります。長方形かつ畳縁のあるものだとどうしても日本の伝統的要素が強く出てしまい、これを洋風のインテリアと調和させるのはかなり難易度の高いインテリアコーディネーションとなります。
また、正方形の畳マットを選択することの副次的な効果として、畳の目の角度を交互に配置することで外から差し込む自然光の反射による有機的な市松模様を演出できることがあげられます。外光の取り込みは自然との調和を重んじるJapandiスタイルとも相性がよく、自然光が演出する畳マットのコントラストはあなたのインテリアをより一層洗練されたものにすることでしょう。もちろん、異なるカラーの畳マットを交互に配置してあなた好みの市松模様を作ることも可能です。

畳マットを自宅に用いた空間演出の例は以下のようなものがあげられます。そのほかにも様々な活用方法が考えられますので、ぜひあなた好みの和モダンインテリア演出をいろいろ試してみてください。
- リビングルームの一角に和モダンなスペースを作る
- 子供の遊び場スペースを作る
- 小上がりを設けて特別な空間を演出する
結論
今回は、区分けが曖昧な従来型の畳と畳マットの違いを挙げたうえで、洋風のインテリアに和モダンなエッセンスを加える際には畳マットが最適な理由をご説明いたしました。いかがだったでしょうか?今回の記事が皆様の畳ご購入の際に参考になりましたら幸いです。今回の記事を要約すると、畳マットとは「従来の畳がもつオーセンティックな雰囲気を残しながら、フローリングが用いられた洋室にも簡単に取り入れることができる新世代の畳」と呼ぶことができるのではないかと思います。ただし畳マットは世に出回ってから比較的日が浅い商品のため、本国の日本でも明確な呼称が定まっていない傾向にあります。例を挙げると、「置き畳」「ユニット畳」「フローリング畳」など、畳マットと同義の呼称も多く散見されます。米国では逆に従来型の畳もモダンな畳マットも「Tatami Mat」と呼ばれているように思われます。このように呼称が定まっていない状況の中で、自分が探しているタイプの畳がどのようなものなのか詳細がわからず迷われている方も多いかと思います。その際は、いつでも私たちInterra USAにご相談下さい。あなたの要望をお伺いしたうえでぴったりの畳をご案内させていただきます。
それでは今回はここまでとさせていただきます。次回も和風インテリアに関心の高い方のためにぴったりのトピックを用意してますので、楽しみにしていてください。
参照リンク:
置き畳ってどんな畳?普通の畳との違いについても紹介! | 畳のミカタ.com
置き畳と和室の畳の違いは?
和室の畳と置き畳の違いは何ですか? – YouTube
置き畳のメリット・デメリット!フローリングで使うポイントを解説 – ラグ・カーペット通販【びっくりカーペット】
畳とフローリングどっちがいいの?メリット・デメリットをまとめました。
置き畳商品開発者が本気で選ぶ!おすすめ置き畳10選。選び方のポイントもご紹介 – イケヒコのインテリアブログ
畳の種類まとめ 素材の違いや選び方、伝統的なスタイルから和モダンに合う製品 – DAIKEN – 大建工業
置き畳|工場直販の畳通販専門店 たたみのこうひん [公式]
琉球畳と置き畳の違い
置き畳でフローリングの部屋に和室空間を!メリット・デメリットと設置のポイント – &ART
置き畳をフローリングに設置するメリットデメリット│選び方も紹介 – くらしのマーケットマガジン